太田光のお笑い論「漫才よりフリートークのほうが面白い」

2016年4月5日の爆笑問題カーボーイにて、放送作家・高橋秀樹さんの息子でコラムニスト(当時弁護士)の高橋維新さんの「カッチリした漫才をみせるよりもフリートークのようにカジュアルにやったほうがウケる。」という批評に対し、太田さんは「そんなことは誰でもわかっているんだよ!」と返し、演芸の舞台からテレビのバラエティーへの変遷を交え、フリートークのほうが漫才よりも面白いこと、それでもなお爆笑問題が漫才を続けている理由を語りました。

高橋維新のページ – 爆笑問題・太田さんへの反論

フリートークはテレビ向き

太田:萩本(欽一)さんっていうのは、何にもネタ決めずに舞台に出ていったんですよ、野面で。で、設定だけ決めて(コント55号の相方の坂上)二郎さんを追い詰めていくって、これは新しかった。これは萩本さんが天才たるゆえんですよ。つまりテレビ自体にもうそういう決め事っていうののハードルを下げているわけですよね、55号の時点ですでに。(中略)欽ドンがテレビになって、茶の間の舞台になって、欽どこ(欽ちゃんのどこまでやるの!)始まって、茶の間の舞台になってそこで真屋順子さんとかと一緒に大枠だけ決めといて、あとはその場で起きること、これはフリートークですよ、言ってみれば。そっちのがテレビ的だってその時点でわかっているんですよ。下手すりゃツービートが漫才ブームで出てきて、オールナイトニッポン、一人で「ビートたけしの」って始めたときに、ツービートの漫才より面白かった。俺たちはそれを体験してるんですよ。フリートークですよ、これ前半の2時間フリートーク。(中略)その時点でもうわかっているんですよ。これから漫才やりますよっていうより、そっち(フリートーク)のほうが面白い。

TBSラジオ 2016年4月5日 爆笑問題カーボーイ

YouTube – 爆笑問題カーボーイ 2016年04月05日

一方、テレビでのネタ番組は長く続かないと太田さんはい言います。たしかに、ボキャブラ天国に始まり、爆笑オンエアバトル、エンタの神様、爆笑レッドカーペット、イロモネアと歴代様々な工夫を凝らしたネタ番組が誕生していますが、2020年現在はどの番組もレギュラーでの放送はありません。

今(2020年11月22日現在)放送されているネタ番組は千鳥のクセがスゴいネタGP、ネタパレ、ネタサンド(お願いランキング)、そろそろ にちようチャップリン、有田ジェネレーションあたりでしょうか。この中からエンタの神様のような代表的なネタ番組になるものは現われるのでしょうか。

爆笑問題がテレビで漫才を続けるワケ

では、ネタよりフリートークのほうが面白いとする太田さんが、なぜ漫才を続けているのでしょう。

太田:(前略)みんなネタで出てってもネタ捨ててますよ。俺たちはね、なんでいまだにネタやってるのかって言ったら、タイタン作って、タイタンライブっていうのやったりなんかしたときに、いろいろ聞かれて嘘ばっか答えてるんですよ。「なんでネタやっているんですか?」→「ネタが大事ですから。」そんなことじゃないんです。単に、時代のめぐりあわせなんですよ、これはね。その間にボキャブラ天国があったり・・・(中略)そっから俺たちは仕事ができてきて、そのころタイタン作ってネタを定期的にやってたから、なんとなく(漫才を続けて)やっているんですよ。

TBSラジオ 2016年04月05日 爆笑問題カーボーイ

太田プロにスカウトされ、デビューしてすぐに太田プロの若手で一番推され、「第二のツービート」とまで称された爆笑問題。しかし、太田プロを辞め、当時の担当マネージャーと独立したことで、3年ほどテレビから干されることとなります。その後、NHK新人演芸大賞での大賞獲得をきっかけに、太田さんの妻である太田光代さんが個人事務所タイタンを設立。徐々にテレビに復帰しだします。そして、「GAHAHAキング 爆笑王決定戦」で10週勝ち抜き初代キング、「ボキャブラ天国」で初代名人になるなど、爆笑問題は実力を示し、再び注目を集め、復活を遂げました。このことから、爆笑問題は常にネタと共にあることがわかります。

2020年 ネタ番組復興の兆し

フリートークの番組と比べると、ネタ番組のレギュラーが少ない一方、特番でのネタ番組は盛んになってきています。2020年は正月のネタ番組のほか、ENGEIグランドスラム、ザ・ドリームマッチ、お笑いの日2020、ネタジェネバトル、ザ・ベストワン、お笑い二刀流 MUSASHI、エンタの神様、ネタフェスジャパンなど、様々なネタ番組の特番が放送されています。

エンタメ! エンタウオッチングによると、ネタ番組が増えた理由として、第7世代芸人というくくりができて若手芸人がフィーチャーされたこと、コロナ化の不安からお笑いのニーズが高まったこと、広告主からの要望で世帯視聴率ではなく、若者の視聴率が重視されるようになったことなど、複数の要因が重なったとしています。

エンタメ! エンタウオッチング – お笑い特番ラッシュの裏側 第7世代・コロナ・広告主

なぜ爆笑問題の漫才にはストーリー性がないのか

さらに、高橋維新さんは批判として、爆笑問題の漫才はテーマが統一されておらず、小間切れになっていることを挙げました。これに対して太田さんは「たしかに一理ある。」と一定の理解を示しています。

俺たちは何でこれ(小間切れの漫才)をやっているかというと、テレビで漫才をやるときに、いつ、そこのチャンネルにあわせても変えられないようにっていう、金太郎飴のようにギャグが次から次へとっていうのをあまりにも意識しすぎてやってきた。だって、(ネタ番組は)数字が取れないから。でもそれで俺たちは分計(1分毎の視聴率)を上げてきた。分計っていうのが出るんですよ、言っとくけど。そういう意味で長尺の漫才を今、ENGEIグランドスラムでね、見てくれるようになってるってことはそろそろ俺たちもそういう改革はしてもいいのかなって。それはあいつ(高橋維新さん)に言われたからじゃないよ。

TBSラジオ 2016年04月05日 爆笑問題カーボーイ

昔の爆笑問題の漫才のように、一つのテーマでの漫才も是非見てみたいですね。個人的には爆笑問題のハッピー・タイムのようなCMパロディーコントもすごく好きなので、ストーリー性のある漫才・コントをやる爆笑問題に期待しちゃいます。

YouTube – お笑い第3世代爆笑問題
ニコニコ動画 – 爆笑問題のハッピータイム

太田光「お笑いは自由」

続けて、太田さんは高橋維新さんのいじられキャラだったが、自分から笑わせるように変わったという生い立ちを挙げ、「これは俺の意見だけど」と前置きしたうえで、「嘲笑であろうと何であろうと舞台に上がったら、笑われたって笑わせたって、こっちが笑われてるなんて考えている奴はクソなんだよ。笑われてていいんだよって彼に一言いいたい。」と持論を展開しました。

さらに、高橋維新さんの「お笑いのマニュアル化」に関して、「彼はお笑いをマニュアル化しようとしていると。それはほとんど合っていると言っているんだけど、君たち親子はね、あまりにもね、自由がない。笑いっていうのはね、もっと自由なモノなんですよ。何がどうやったっていいんですよ。こうでなきゃいけないって、あまりにも考え方が窮屈すぎるっていうことなんですよ。」と、お笑いは何にも縛られないんだと熱く語っています。

太田さんの「後輩にダメ出しをしない」というポリシーも”お笑いは自由”という考えのもとでのことなのでしょう。

太田にはポリシーが二つある。「若手のネタにダメ出ししない」「審査員をやらない」だ。 「(事務所の)オーディションは見ないんですけれども、選考担当に『絶対、駄目出しすんな』って言っているのね。笑いというのは個人的なものだから。ネタ見せ会場で全然ウケなかったやつが、客前に出たらもうバカウケするみたいなことはしょっちゅうある。現にタイタンのライブに、小島よしおが来ていたらしいけれども、毎回落としていたんですよ。でもその後、大ブレークして。そういうもんだから。セオリーなんかないんですよ、笑いに」

Yahoo!ニュース 「人の違いを面白がれない、そんな殺伐としたものになっちゃっていいのかな」――爆笑問題・太田光が憂う、笑いのガイドライン

太田光:「芸人がやっていることが一番面白い。」,「ネタはお前たちのやりたいようにやればいい

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